ドイツに永住を決めたので、うちの子供たちはドイツの幼稚園とドイツの小学校に行っています。そして家では日本語で話すのが家則になっています。ドイツにずっと住むことを決めた以上、日本語並みあるいはそれ以上のドイツ語が大事だと思ったからです。そしてあわよくば将来は3人共バイリンガル?とほくそ笑(え)んでいたのですが、先日もうすぐ10歳になる娘の口からとんでもない?日本語が飛び出しました。
“昨日は私の日じゃなかった。”... それってドイツ語の言い回し。つまり独和の直訳。日本語なら”昨日はついていなかった。”とかになるはず...そうか、娘は自分がしゃべる文書を頭の中でドイツ語で作ってから日本語に直しているのか...と、複雑な気持ちになってしまいました。
うちの子供たちの一日は、寝る時間が約10時間、学校で過ごす時間が約6時間、残りは8時間もありますが、その8時間は家族で日本語を話している時間ではなくて、習い事や移動、友達と遊んでいたりする時間がほとんど。家ではドイツ語を禁止してはいるものの、それが守られるのは親がそばにいる時だけです。
子供達だけの時はずっとドイツ語。つまり日本語を話すのは家族の集る朝食と夕食の時だけとなります。つまり日本語よりもドイツ語を使う時間の方がはるかに多いのです。だからバイリンガルと言うよりは、どちらかというとドイツ語が母国語。そして日本語のレベルが、会話のレベルだけは特に高いということになります。
学校でドイツ語、家庭で日本語を使っていれば、バイリンガルが自動的に出来上がると簡単に思っていましたが、思い違いもいいところ。どうやらドイツ語も日本語も中途半端になりそうです。中途半場が言い過ぎだとすれば、両方とも不十分。ドイツ人の子供たちは、うちが家庭で日本語で話したり、公文をやっている時や日本昔話を聞いたりしている時もずっとドイツ語の中にいます。
日系1世が現地の人と同じようになれない理由はその辺にありますが、子供の頃からドイツの童話から始まって歴史などを十分に知識として蓄えている人たちに1世がついていける訳がありません。言い訳するわけではありませんが、33年もいてもサイエンスフィクションの映画を70%位しか理解できなかったり、やコメディーで笑うときに笑えない理由はその辺にもあります。
最近ドイツ生まれのドイツ育ち、周りの友人たちも認める優秀な学生で現在大学で法律を学ぶ日本人の若者と知り合ったのですが、しゃべる日本語は勿論普通の日本語。でもドイツ語もドイツ人並み。というかどちらかというとドイツ語が母国語。でもやはり漢字が苦手だそうです。う~ん、バイリンガルってそういうものか...と思いました。
つまり普通の日本人ができる日本語が100%、普通のドイツ人ができるドイツ語が100%とした場合、バイリンガルでも例えばそれらが70%と80%レベルであるということです。たしかにいくら頑張っても人の丸々2倍は無理なような気がします。でも国家レベルの会議で活躍する同時通訳のレベルの人達は多分かなりのレベルだと思います。2ヶ国語両方とも全然勉強しない母国語だけの人よりも両方共すごいのではないでしょうか?
日本語というのは、その語源がいまだに分からずに不思議な言語のようです。中国の漢字を輸入して出来上がっているのは間違いのないことですが、そのルーツがどこからきているのか言語学者達にも分からないそうです。
心を亡くすと書いて忙しいとか、信じ(させ)る者と書いて儲か(儲け)るとか、大変に面白い日本語ですが、その日本語が実は第2次大戦の時に危機に遭ったそうです。アメリカ人の、日本の教育の状況と日本語に対する無知と偏見から、日本語は漢字が多いために覚えるのが難しく、識字率が上がりにくいために民主化を遅らせている。と、ジョン・ベンゼルという若い将校の発案で、日本語を何とローマ字表記にしようとする計画が起こされたのです。
当時東大の助手だった言語学者の柴田武さんという人が、民間情報教育局の指示でこの読み書き全国調査のスタッフに選ばれ、漢字テストの出題を任されたそうです。そして統計学者の林知己夫さんという人が、全国の15歳から64歳までの約1万7千人の老若男女を対象とした日本人の全国試験調査 ”日本人の読み書き能力調査”を行った結果、漢字の読み書きができない人はわずか2.1%だということが分かって、日本人の識字率が100パーセントに近いという、当時としては大変優秀な結果が出たそうです。
その数値は世界的に見ても例を見ないレベルでだそうです。そして日本語のローマ字化は無事に撤回されたようです。ちなみに現在の識字率は先進諸国は日本を含めてどこも99%。面白いところでは、日本にお相撲さんのいるグルジアが唯一100%で、他にロシアの周りの国々が先進国のそれを上回っていることでしょうか(Wikipedia、国連の識字率による国順リストより)。
そう言えば英語というと世界中の言語の中でナンバーワンだと思うのは私だけではないと思うのですが、その歴史もさぞかし古いのかと思ったら大間違いのようで、どうやらフランス語から来ているそうです。現在の英国王家の先祖、十一世紀にイングランドを征服したノルマンディー公爵とその周りの貴族は、古代フランス語しか話さなかったそうです。
そういえばその頃の時代の設定で、フランスがイギリスに攻め入ってイギリスがやられてしまう映画が昔ありました... その古代フランス語が原住民のゲルマン語と混ざってできたのが英語で、今でも英語の四割以上はフランス語が起源だそうです。英語のルーツがフランス語であるという意外な事実(月間致知12年3月号、篠沢秀夫学習院大学名誉教授の記事より)。
確かにフランス語を習っていた知り合いのイギリス人、大変にペースが早かったような... そしてやはりフランス語と多くの単語が一緒だったり似ているイタリアの人の英語を覚える早さも日本人にしてみると異様なものがあります。