日本の食料自給率の嘘ホント

興味深い記事をまた見つけてしまいました。致知という月刊誌にはそういう記事が頻繁に載っていて興味深くてお勧めです。今回は123月号、浅川芳裕という農業技術通信社という会社の専務さんの記事ですが、日本の農業が食料自給率40%で弱いというのはどうやら幻想のようです。農業技術通信社で市場規模調査を行ったそうなのですが、食料自給率40%といわれている日本が、実は世界第五位の農業大国なのだそうです。農業生産額が約八兆円で、中国、アメリカ、インド、ブラジルに次ぐそうです。

 

まずそれは日本のスーパーに行けば一目瞭然とのことで、スーパーの店内には一年を通じて色々な種類の農産物が豊富に並び、その多くが国産表示であることを考えれば当然だそうです。確かにいわれてみればこちらドイツのスーパーの野菜・果物売り場と比べても日本の方が鮮度も種類もはるかに上。しかもドイツのスーパーのそれは、いまでこそ良くなったものの、20年前はそれはそれはお粗末なもので、日本人には考えられないひどいレベルのものでした。ドイツ人は野菜を食べないのだろうか?と思ってしまうほどの種類しか置いてなく、その鮮度といったら日本では捨ててしまうほどのレベルで、えっ?こんなもの売るの??といった感じでした(笑)。

 

で、記事の方をもう少しご紹介しますと、日本が農業大国である理由がいくつも載っているのですが、まず第一に国土が南北に長くて高低差もあり、しかもその土地土地で四季折々の農産物を一年を通じて作っていることだそうです。第二に、日本が先進国、法治国家で貨幣も安定して物流などのインフラが整っているからで、農産物が生産側から消費側まで混乱なく鮮度を保って迅速に移動できること。第三に国民の購買力が高いこと。日本人の所得を見れば世界的にも高い水準。日本の農産物で生産量が世界的にトップレベルにあるのはイチゴやメロン、桃などの単価の高い嗜好品が高いウェイトを占めているそうです。

 

第四に独自の食文化を持っていること。和食の地位は世界中でも段々と認められつつあり、さらにそこへフレンチ、中華、イタリアンなどの食文化を取り入れてさえしまうものがあります。そして第五に産業技術、農業技術が高いことです。大農場経営には向いていないので、その方面はアメリカが強いのでしょうが、例えば品種改良技術などは世界のトップレベル。そういえば果物などもいろいろな品種改良が次々と行われていてとても美味しいものが多いですが、それはドイツでは考えられません。しかも農業GDPという統計では日本は5位、農家一人当たりのGDPは六位で世界に堂々と誇れるレベルだそうです。

 

ではなぜ自給率40%なのでしょうか? どうやら数字のトリックのようです。まず農家の減少ですが、農家の減少イコール農業の衰退ではないようです。生産性の向上で、農家数は6分の1に減少しているものの、生産量は増えているそうです。つまり生産性は6倍以上。減った農家は別の産業に移り、残った農家の生産性がはるかに向上して少数精鋭の農業が国民の食を支える文化的な構造転換になっているそうです。それなのに、どういう訳かカロリーの数値がこの40%の元になっているそうです。

 

そしてその算出方法は農水省の官僚の勝手な、でも実に巧妙な計算だそうです。もしこの自給率が90%となってしまうと、誰もが何も心配ないと思ってしまう。逆に例えば4%だと、もう駄目だと諦めてしまう。それを40%前後にしておいて、去年は39%だったので、今年はもう少し頑張りましょうとかいう自作自演の茶番劇だそうです。こういう算出方法をしているのは日本だけだそうで、しかもその比較に出す他の国の数値も、それらの国が出している数値ではなくて、日本の官僚が自分の物差しではかって出している数値だそうです。

 

さらにそのひどさの極めつけは、そういう数値を英語で国際的に発表していることです。本来なら世界に誇れる日本の農業を、いかに国力がないかのように発表しているのだそうです。ではなぜそんなことを?と思いますが、それも官僚の悪い癖で予算制度から来ているそうです。自給率が低いので、自給率を上げるのが我々の使命であるという農水省の公然としたミッションになるそうです。うそのような(たぶん)本当のお話。日本の税金が高いわけです...