大家稼業を始めて20年以上がたちましたが、いままでで一番変わったできごとは、あるイギリス人の店子さんの時のことでしょうか。 同じ日本人の店子さんの方が安心できるので、普通は日本人の店子さんを探しますが、その時は広告を見ていただいたある日本人の空手の先生から連絡をいただき、同じ道場に新しく来たイギリス人が部屋を探しているので入れて欲しいといわれました。
そのイギリス人の職業が何とボディーガードということで、以前サッチャーさんの運転手兼ボディーガードをしたこともあり、つい先日まではアメリカである有名人のボディーガードをしていて、最近デュッセルドルフのある大企業のオーナー社長さんのボディーガードになったそうです。 その社長さんの朝晩の送り迎えと日中のご家族のボディーガードが仕事だそうです。
そう聞けば、例のケヴィンコスナーとホイットニーヒューストンのボディーガードという映画を見たことのある私にとって安心できる相手と思って快諾しました。そのイギリス人が丁度入居した頃、私は仕事の都合で3ヶ月ほど日本に行っていたのですが、帰ってきてみて気がつくと家賃が全然入っていません。
本人にも、紹介してくれた日本人にも連絡が取れずに困っていましたが、暫くすると彼の友人のひとりであるというイギリス人のある女性から電話がありました。 彼女が言うには、彼は今刑務所に入っているとのこと。雇い主である社長さんと争っているうちにナイフのようなもので刺してしまい、社長さんは亡くなってしまったそうです。
彼の雇い主である社長さんは家で子供に折檻するらしく、子供好きな彼としてはそれを黙ってみていられずに、止めるつもりが争いとなってしまって(彼は強いでしょうから社長さんが取り出したナイフなどのようなものを奪い取るかたちとなって?)争っているうちに社長さんが刺されて死に至ってしまったそうです。
彼にはあまり貯金が無く、あるのは一台の車だけ。その車を処分すればいくらかの現金ができるものの、これから何年刑務所にいるのか分からず現金がなければ困るだろうから滞納中の家賃を待って欲しいということでした。
嬉しかったのは、その後刑務所にいる彼から突然電話が入り、今やっと2,3箇所に電話をかけることを許されたので、両親以外(?)に、心配していた私のところに電話をしてくれたそうです。7年の刑務所生活が始まるとのことでした。
その7年間の間に是非ドイツ語をマスターしてくださいとエールを送るつもりで(?)独英・英独の辞書を彼に送りましたが、その後の連絡はありません。その後のお話で、亡くなった社長さんの奥さんとその彼が関係を持っていたというお話も聞き、なにやら本当に映画のようなお話でした。現在も当時の家賃はまだ未納のままですが、これはもう時効となるのでしょうか...笑。