下の三つの画像が何を示しているか分かるでしょうか?
人間の頭部をCTスキャンで撮影した画像ですが、その道の専門家でなくても異常な様子が見て分かります。3つとも全て、臨床医学的には異常がありません。
右端の画像は、子どもを二人持ち、役所に勤める40歳代の普通のフランス人です。さて彼は考える時にいったいどの脳みそを使うのでしょうか?脳みそはほんの僅かしか見えません。
真ん中の写真は、50歳前後のトラックの運転手で、彼の頭蓋骨の中の見た目での異常がCTスキャンで偶然に見つかりました。この画像を普通の放射線科か神経科の医者に見せれば、良くて深いこん睡状態か、あるいは死亡した人間の脳と判断されるそうです。
左端の画像は最も新しくて、世界的に有名な医学雑誌に2001に発表された、3歳の時に左脳を摘出された少女の脳です。特殊な炎症があったので、左側の脳を全て摘出するしか命を救う方法が他になかったそうです。
ご存知の通り、左脳は言語を司りますが、7歳の時に調べられたこの少女は、車椅子の生活などをしているのではなく、ほぼ正常に生活し、オランダ語とトルコ語のバイリンガルになっています。
これを見ると、人間が脳のほんの僅かな一部しか使っていないことが本当に良く分かります。つまり逆を言えば、脳をもっと使えるはずなのです。
人間の基礎代謝、つまり横たわっていても使うエネルギーは普通の生活時の約6割と言われ、「寝ているだけで何でそんなにエネルギーを使うの?」と疑問に思いますが、成人のエネルギーの2割は脳みそが使います。
例えば脳みその重さが約1.5kg、体重が70kgの人の場合、それは脳みそが体重のわずか2%しかないことを意味します。
その僅か2%が、20%のエネルギーを使うのです。それが子どもになると約50%まで跳ね上がります。つまり、身体を激しく動かして元気に動き回っている子どもたちは、そのエネルギーの約半分までは脳みそが消費していることになるのです。
人間の脳みその中にある、神経回路のつなぎ目であるシナプスは、誰でも100兆個以上も持っていますが、良い刺激で成長が促進され、経験や刺激を積んでいくことで細かったシナプスは太くなり、より短時間で考えられるようになります。つまり、頭が良くなります。
0歳から3歳までの間に、シナプスの結合が活発で、爆発的に増え続け、大脳の基本的な発達、成人の約8割が出来上がり、その後の増え方は徐々に減って、6歳で9割方完成するそうです。
つまり、その時期の教育がとても大切であることを表しています。子どもが文法を覚えるのは、実は生後7ヶ月の頃からだそうです。「えっ?しゃべれるようになる前から?」と思いますが、実験の結果、それが分かったそうです。
文章を変化させて、7歳児に聞かせ、その興味の度合いからそれが分かるそうです。子どもは爆発的に学習しているので、既に習った形の文章は退屈で、それが新しい形になるととたんに興味を示すそうなのです。
ちなみに目の前で飲み物の容器を移し変える動作を、チンパンジーの赤ちゃんと人間の赤ちゃんの目の前で行って目の動きを調べると、チンパンジーは動くものだけ見ているのに対して、人間の赤ちゃんはその動作を行っている人の顔も見ているそうです。
狼少女アマラとカマラが示すように、人間の子どもがその大事な時期に適切な教育を受けないと、狼になってしまうのです。
人間の脳の不思議... 身体の不思議...
出典: Prof. Dr. Dr. Manfred Spitzer
Universitätsklinikum Ulm 医学長
während der AAD 2012(上の動画)
参考:「シナプス」で出てくる様々なインターネット情報
23. Jan. 2015